九州大学大学院工学研究院附属環境工学研究教育センターは、未利用魚となってしまっているが”実は美味しい深海魚”の普及と利用促進を目的に、2024年12月26日(木)に鳳凰高等学校と協働し、『旨魚(うまいよ)!南さつま 深海魚大解剖 ~深海魚で学び,深海魚の味を楽しもう!~』を開催いたしました。
鹿児島県南さつま市は、タカエビ漁の際に混獲される未利用の深海魚に価値を見出し、市を挙げて深海魚の価値の普及活動を行い消費拡大に取り組んでいます。(https://www.unmaka373.com/)
鳳凰高等学校サイエンスクラブでは、2021年度から南さつま市やかごしま深海魚研究会と連携して、南さつま市で水揚げされる深海魚のブランディングに取り組んでいます。一般社団法人海洋連盟が主催する『うみぽす甲子園2023』では、深海魚の利用促進を呼びかけるポスター作品を投稿し、ファイナリスト賞に輝きました。(https://umipos.com/koshien/2023/result.html)
私たち九州大学うみつなぎの統括プロデューサーである清野聡子は、うみぽす甲子園の審査員を拝命した際、鳳凰高等学校サイエンスクラブの作品に感銘を受け、未利用深海魚の普及活動に貢献すべく今回のイベントで協働をさせていただく運びとなりました。 このイベントは、次世代へ豊かで美しい海を引き継ぐために、海を介して人と人とがつながる“日本財団「海と日本プロジェクト」”の一環です。
イベント概要
開催概要
未利用魚・低利用魚になってしまっている深海魚の利用促進を図るため、サイエンスと、美味しさとの両方からアプローチする高校生が考えた”命を無駄にしない”試みのイベント。
日時
2024年12月26日(木)10時~14時30分
場所
鳳凰高等学校
参加者
19人
主催
鳳凰高等学校サイエンスクラブ(https://hooh.ed.jp/info/)
共催
南さつま市(https://www.city.minamisatsuma.lg.jp/)
鹿児島県漁業協同組合南さつま野間池支所
九州大学うみつなぎ(https://umitsunagi.jp/)
ゲスト
【第1部】 清野聡子(九州大学准教授・九州大学うみつなぎ統括プロデューサー)
【第2部】 西海晴(鹿児島大学水産学部・2019年度 鳳凰高校卒業生)
イベントレポート
【解剖】学びとしてのツール、深海魚の不思議に迫る
第1部は、深海魚を「学びのツール」としての利用を図るべく解剖に挑戦しました。深海魚の多くは光を遮断するように腹膜や胃袋などが黒いという特徴を持っています。
解剖を始めるにあたり、サイエンスクラブの生徒から、深海魚の概要や、南さつま市やサイエンスクラブによる利用促進への取り組みが紹介され、参加者は見本となる解剖図が載ったオリジナルの下敷きも参考に、サイエンスクラブの濱上君、鮫島君、橋口君、加藤さん、中原さんの指導を受けながら、ひとつひとつ丁寧に臓器を取り出し観察を行いました。中には胃袋の中に残留している未消化の生き物を見つけて人だかりができる一幕もありました。
会場には鹿児島県漁業協同組合南さつま野間池支所の協力の下、ノコギリザメやミドリフサアンコウ、ヒレタカフジクジラ、カゴシマニギス、メンダコなど、前日に水揚げされた20種類以上の深海魚が並び、参加者たちは普段目にする魚とは異なった深海魚の体のつくりに興味深く見入っていました。
今回は、残念ながら風邪のため、ゲスト講師の清野はオンラインでの参加となってしまいましたが、サイエンスクラブの活動紹介のなかで、2023年度に出場しファイナリスト賞を勝ち取った『うみぽす甲子園』の写真が飛び出した際にはとてもうれしそうに微笑んでいました。
【調理】命に感謝、最後まで無駄にしない志
第2部は深海魚を使った料理づくりに挑戦しました。ゲスト講師を務めた西海晴さんは、鳳凰高校の卒業生であり、鹿児島大学水産学科に在籍しながら「#3か月後に鮨屋を開く大学生」のハッシュタグを発信し、公約通り念願の魚料理店をオープンさせた経歴を持ち、積極的に未利用魚・低利用魚の消費を取り入れ、市場に並ばないマイナーな魚が秘めている魅力の探求に取り組んできました。
今日の調理では、アカカサゴとスミクイウオを使用し、アカカサゴは餡かけ唐揚げに、スミクイウオはサイエンスクラブが考案したフレーク料理へと姿を変えました。フレークを作る際に不用となる頭や中骨は味噌汁の出汁に使われ、味噌汁に入れる具には、サイエンスクラブが管理する畑で育った自然農法の大根を使うという徹底ぶりです。料理が出来上がり、食事を口に運ぶ参加者たちは、口々に「美味しい。美味しい。」と顔を見合わせながら満足そうな表情で料理を堪能していました。
イベントの終わりには、今日の解剖や調理で出てきた魚の残渣は、畑の肥料として余すことなく利用されることが説明され、命に感謝し、最後まで無駄にしないことへの志に対し、参加者も共感するようにうなずいていました。
今回のイベントには南日本新聞社さんも取材に駆けつけて下さいました。こちらの記事も合わせてお読みいただけましたら幸いです。(https://373news.com/_news/storyid/206829/)
【刮目】飛ぶ鳥落とす勢いの『鳳凰高校サイエンスクラブ』
鳳凰高等学校(旧加世田女子高等学校)の看護科は、充実した設備と全国一の定員数を誇り、九州各地から進学希望者が集まる有名校ですが、鳳凰高校サイエンスクラブも新聞やテレビなど様々なメディアなどで活動を取り上げられ注目を集めています。
サイエンスクラブの活動は深海魚の消費促進だけではなく、笹川平和財団『海洋教育パイオニアスクールプログラム』の一環として、XR技術の活用にも力を入れています。
会場の一角では、VRカメラでバーチャルに映し出される深海魚のモデルをコントローラーを使って操作し観察できるVRヘッドセットが設置され、参加した小学生たちは興味津々に最先端の技術を体験していました。(13歳以下の方は保護者の承諾の下、ヘッドセットを使用しています。)
直近では、南さつま市が新しく導入した自動運転バスのラッピングデザインをVRの技術を活用して手掛けるなど、地域の話題作りにも貢献しています。サイエンスクラブの活動は、noteでも発信されていますので、ぜひチェックしてみてください。(https://note.com/humanproject)
参加した子ども・保護者からの声
(解剖)
・深海魚の内臓は黒いものが多いことに驚いた。
・胃袋が黒く、光っている餌を食べても自分は光らないようにと工夫していることを初めて知りました。
・胃がとても厚くて切りにくかった。エラの水を外に出す穴が魚の生態によって構造が違うのに驚いた。
・胃の中から小魚やエビが出てきた。
・意外と切るのが難しい。肝臓が大きかった。
・心臓は意外に小さくて摘出に時間がかかった。
・大解剖下敷きがあったのでとてもわかりやすかった。
・深海魚の体の中は全然わからないことだらけだったので解剖していろいろ知ることができてよかった。
・普段できないような体験をすることができてとても楽しむことができた。
・面白い体の深海生物がたくさんいた。メンダコがかわいかった。
(調理)
・キッチンバサミでも魚をしっかり捌けるのに驚いた。
・少し難しかった。
・初めはヒレが取れなかったけど少しずつ取っていって食べたらとても美味しかったです。
・魚の捌き方を初めて知りました。なかなか食べることのない深海魚が食べれてよかったです。
・とても美味しい料理が作れて嬉しかった。
・普通の魚を食べているみたいで深海魚だと思えなかった。
・思っていたよりもおいしくていろんなアレンジがあって、深海魚ってステキだなと思いました。
・もっと調理をしてみたい。
<団体概要>
団体名 :九州大学大学院工学研究院附属環境工学研究教育センター
URL :https://umitsunagi.jp/
活動内容 :九州大学うみつなぎは、中高生に対する海洋教育を通じて国際的に活動できる「海の精鋭」を育成する活動を行っています。日本財団 海と日本プロジェクトの補助事業として、九州大学が主催し、九州を中心とした各学校・関連団体・沿岸地域との協力体制を築きつつあります。「海の総合知」を目指し、特に海洋ごみ問題に積極的に携わり、地域から国内、国際をつなげています。磯焼け、漂着生物、海洋地形もテーマです。
日本財団「海と日本プロジェクト」
さまざまなかたちで日本人の暮らしを支え、時に心の安らぎやワクワク、ひらめきを与えてくれる海。そんな海で進行している環境の悪化などの現状を、子どもたちをはじめ全国の人が「自分ごと」としてとらえ、海を未来へ引き継ぐアクションの輪を広げていくため、オールジャパンで推進するプロジェクトです。
https://uminohi.jp/
<お問い合わせ先>
団体名:九州大学大学院工学研究院附属環境工学研究教育センター
担当者:木下・清野
電話番号:092-802-3437(九州大学生態工学研究室)
メールアドレス:contact@umitsunagi.jp
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