2023年8月10日に、九州大学 にて開催された海の学びステップアップの発表です。
発表者:菅 浩伸教授(九州大学浅海底フロンティア研究センター センター長)
発表概要
私は、自然地理学という分野のサンゴ礁地形学を専門にしています。自分で地図を作り、海底を探検して、潜水調査をしながら研究しています。
海の中に何があるかは、ほとんど謎です。世界では2030年までに全世界の海底地形を明らかにしようという試みが始まっていますが、沿岸域の測量は大変難しく、惑星よりも地図化が遅れているのが浅海底の地形です。
従来はシングルビームで測深していましたが、私はマルチビーム測深を使って海底を三次元で測定しようという活動を始めています。大型船は浅瀬には行けないため、漁船に測深機を乗せられるように工夫して、地道な作業を重ねながら測線していきます。
石垣島の名蔵湾で測量したところ、旧河川跡とみられる谷や、カルスト地形が見つかりました。このことは、発見でもありますが、地形がわかり、地図ができたことで、潜って調査ができるようになったということは大きな成果です。環境が良くないのであまりサンゴはいないのではないか、埋め立ててもいいのではないかと言われていた場所も、潜ったことで、実はサンゴ群集があり、魚もたくさんいて豊かな海域だということが推定されました。陸地から目と鼻の先のことがわかっていなかったのです。これらの場所は陸の開発の影響が及びやすい海域であるだけに、様々な立場の方が関わって海域利用計画を作ることが急務です。
このような研究を進めるために、九州大学は2016年に浅海底フロンティア研究センターを設立しました。沖縄、九州、小笠原などで測深しています。海底地形図を基に自然科学から人文科学の垣根を越えた学際研究を推進しています。
このような研究の先には、社会連携や学生の育成が必要です。学生や一般の方に知っていただくという意味で講演会を行ったり、中高生に向けての発信をしたりしています。
我々は、高解像度海底地形図を基に調査をしていますが、沿岸海域の海底に関する科学的知見はきわめて少なく、新たな発見がたくさんあります。沿岸域浅海域は人の生活と密接にかかわる地域です。このため、研究成果を社会に実装していく「超学際」研究を推進しています。
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